しばらく多忙で更新できない見込みですが、同趣味の方のために情報提供まで。 Mistress Destiny's Femdom Forumsに劣位男が優位カップルに踏みつけられる画像やビデオのリンクがいろいろ紹介されています。 http://www.mistressdestiny.com/forums//showthread.php?t=68961このテーマの画像・ビデオは希少価値がありますね。 ただしフォーラムに登録(無料)しないと見れないリンクもあります。
[2007/09/06 17:54]
情報 |
トラックバック(-) |
CM(47)
本記事では、筆者のマゾヒズムについて内省する。あくまでも私個人にあてはまる議論であり、一般的なマゾヒズム論ではない。マゾヒズムは十人十色と承知している。 筆者のマゾ嗜好は歳とともに徐々に変わってきたが、幼少時から一貫している基本的な部分がある。それを言葉にすれば、「他者の繁栄のために自己が敗北・破滅することへのときめき」ということになろう。このときめきは、性別や生物種の枠さえ超えうるものである。自然界の仕組みとして、肉食獣に食われる運命にある草食獣が持つ諦念的な利他愛のようなものかもしれない。 ファーブル昆虫記の中に、アナバチの毒針に急所を刺されて麻痺するキリギリスモドキの話がある。動けなくなった獲物の体内にアナバチの卵が産み付けられる。ふ化した幼虫は、獲物の生命維持に必要な部分だけ残し、生きた新鮮な肉を食い続ける。獲物は生きた餌となって食い尽くされる。この話を幼少期に読んで非常にときめいた。この究極的ともいえるマゾヒスティックな状況には今でもときめく。ここで求めているのは「ときめき」であり、死そのものではない。生きたまま食われるからこそ、ときめきがある。 一方、マゾヒズムとは別に筆者にはありきたりの異性愛がある。この異性愛とマゾヒズムの組み合わせによる相乗効果によって大きな興奮が得られる。つまり、性愛の対象である女性の繁栄のために自らが敗北・破滅することに最大のときめきがある。 当然ながら、自己の存続や繁栄を求める本能があるので、自我と他者の繁栄との間に「葛藤」が生じる。その葛藤の中で自我が「崩壊」し、他者の前に屈する。そして、他者に屈した状況を是とする「諦念」に浸る。この「葛藤・崩壊・諦念」を、筆者はマゾヒズムの三相としてとらえている。それぞれの段階に味わいがあって発情をもたらすが、とりわけ胸キュンなのは「崩壊」の瞬間だ。 より効果的に発情するために、自我が崩壊するぎりぎりの状況を求めて夢想する。葛藤から崩壊を経て諦念に達したら、再び葛藤の状況に引き戻すことによって興奮の波を繰り返す。受動的な設定であっても、このような能動的な精神活動がある。 この基本的なマゾヒズムの仕組みに、様々なフェティシズムを重ねることによって、さらに興奮が高まる。筆者の場合、 劣位の三角関係という状況に対するフェチが最も強い。ほかにもいくつか軽度のフェチがあるので、おいおい触れたいと思う。
[2007/08/06 20:58]
随想 |
トラックバック(-) |
CM(7)
利郎は食卓の上を片付け、皿洗いをした。実貴雄が使った皿まで洗うのは気が進まないが、やらないわけにいかない。ときどき居間から妻と愛人の楽しそうな笑い声が聞こえ、そのたびに利郎は疎外感に苛まれた。 皿洗いの最中に、居間から出てきた沙也加がそばを通りかかり、利郎を見て近づいた。 「おー、ちゃんとお仕事してるんだ。イイコだね〜」 利郎が手を止めると、沙也加は「あっ、仕事続けていいよ」と言い、さらに近づき、彼の股間を指でなぞり始めた。一物はすぐに反応し、ズボンの前が膨らんだ。 口を半開きにして切羽詰まった表情で皿洗いを続ける利郎を見つめながら、沙也加は膨らんだ性器の形を確認するように指を動かす。背丈が同じくらいのなので、二人の目は間近にある。沙也加の目は、実験動物の反応を観察するような好奇心に満ちている。 「へー、こんなふうに扱われると、すごく興奮するんだ」 股間の突っ張りに耐えかねて利郎が身をよじり始めると、沙也加は突然手を離してフフフンと笑い、くるりときびすを返してトイレのほうに向かった。 ――ああ、完全に手玉に取られている――利郎はそう感じながら、今の沙也加の行為は何を意味するのだろうかと頭を悩ませた。気まぐれで弄ばれただけかもしれないが、少しでも構ってもらえたのは嬉しかった。妻に見捨てられたようで心細かった利郎は、救われた気分になった。 しかしトイレから出てきた沙也加は険悪な顔つきになっていた。 「トシ、トイレ汚いよ! こんなにおしっこ飛び散らせてよく平気でいられるね。こっち来なさい!」 利郎はあわてて台所の水を止め、おどおどとトイレに向かった。 「ほら、よく見なさいっ!」 沙也加が指さす床のあちこちに飛沫がある。利郎はいつも妻の要求に従って便座に座って小用を足している。こんなに飛び散らせたのは、おそらく実貴雄の仕業だろう。 「どう、ひどいでしょ」 「はい」 「わかったら早く拭きなさい!」 口答えしてもろくな結果にならないのはわかっている。彼女の怒りが収まるまで縮こまるしかない。利郎はしゃがんでトイレットペーパーで床を拭き始めた。芳香剤で消しきれない尿臭が漂う。実貴雄のものだと考えると気分が悪くなる。 「便座の裏にもついてるからね。まったくだらしないんだから。こんなんじゃ気持ち悪くてトイレ使えないじゃないの。バカみたいにボーとしてるからこんなことになるのよ、しっかりしなさいっ!」 「はい、済みません」 両手を腰に当てて見下ろす沙也加の足下で利郎は四つん這いになり、不快感を押し殺しつつ、妻の愛人が飛ばしたと思われる飛沫を一滴も残さぬよう注意深く拭いた。 沙也加の叱り声を聞いた実貴雄が高みの見物にやってきた。 「どうしたん?」 「トシがトイレを汚したから掃除させてるのよ。ミッキーはそんな汚いもの見なくていいの。さ、戻りましょう」 打って変わり優しい口調になり、沙也加は実貴雄の腕を取って居間に戻った。 妻にお触りされて高ぶったのもつかの間、利郎は再び重い気分にさせられた。どうやらこれからは、家で実貴雄が用を足すたびにトイレ掃除にかけつけなければならないようだ。どんどん惨めな状況になっていく。 利郎がトイレ掃除と皿洗いを終えた頃、再び沙也加がキッチンに顔を出した。 「ミッキーがお風呂に入りたいって言ってるんだけどぉ、着替えを持ってきてないの。だからトシさぁ、コンビニまでひとっ走りしてパンツと半そでシャツ買ってきてよ。パンツはトランクス。一番大きいサイズだよ。なるべく高級そうなの選んでね」 利郎は「はい」と返事したものの、暗然たる思いだった。 ――下着くらい自分で買いに行けばいいのに、なんで僕がここまでやらなければならないのか――実貴雄は今晩泊まっていくつもりなのだろうか――つらい一夜になりそうだ。 コンビニを2軒回ったが、下着の品揃えが少なかったので、夜間営業のスーパーまで足を延ばした。利郎が衣類を買うと、センスが悪いと沙也加に文句を言われることが多いので、どれを買うか迷ってしまう。結局、価格が高めのシャツとトランクスを2枚ずつ買った。2枚のうち好きなほうを選んでもらうのが無難だろうと考えた。妻の愛人の下着を買うために、こんなに真剣に悩むのはどうかしていると自分で思った。 利郎が家に戻ると、すでに風呂の用意ができており、遅かったと沙也加に叱られた。買ってきた下着を差し出そうとすると、「アタシに渡してどうするの。ミッキーが使うんだよ」とまた叱られた。 利郎は、居間でソファに踏ん反り返っている実貴雄の前におずおずと進み出た。 「下着買ってきました」 「言葉づかいが甘いよ、トシ」沙也加はたしなめながら実貴雄の隣りに座る。「誰に話しているのかわかるように、『ミッキーさん』とか『先輩』って呼びかけなきゃ駄目でしょ」 彼女が満足するように、利郎は恥じながら言い直した。 「ミッキー先輩、下着を用意しました。お好きなほうを選んで使ってください」 「おーどれどれ」と実貴雄がビニールから取りだす。 「へー、トシにしては賑やかな柄を選んだね」と沙也加。「トシはミッキーにこんなパンツ穿いて欲しいんだって」と笑う。「でも2枚ずつ買ったのは気が利いたね。これからミッキーはしょっちゅうウチに来るから、3、4枚予備があってもいいよ」 実貴雄は、利郎が散々悩んで選んだ下着をとくに批評もせず、シャツとパンツを1枚ずつ無造作に取って言った。 「じゃ、風呂入ろうか、サヤ」 「うん!」 二人は立ち上がった。 「あ、そうそう」と沙也加が利郎に言う。「ベッドの上に新しいシルクのシーツ置いてあるから、アタシたちがお風呂入ってる間に取り替えといて。トシはベッドメイクじょうずだもんね。頼んだよ」 利郎の返事も聞かず、沙也加は「さ、入りましょ」と実貴雄の背中を押すように浴室に向かった。 寝室のベッドの上には、深いブルーのシルクシーツ一式が置いてあった。艶やかな光沢があり、滑るような肌触りだ。沙也加といっしょにこのシーツに包まれれば、さぞかし気持ちいいだろうと利郎は思う。しかし、今晩その恩恵に浴すのは自分ではなさそうだ。 浴室からは、沙也加の嬌声が聞こえてきた。ふだん沙也加は、利郎といっしょに風呂に入りたがらない。風呂場が狭くなるから嫌だというのだ。そんな沙也加が、利郎よりずっと大柄な実貴雄と一緒に風呂に入ってきゃっきゃしている。二人は互いの体を洗っている様子だ。 漏れ聞こえる声や物音に心を乱されながら、利郎はベッドメイクに勤しんだ。妻の心を取り戻すために尽くせば尽すほど、妻と愛人の仲は深くなっていく。底なし沼にはまり、もがくほどに沈んでいく状況だ。 白いシーツを取り外して、ダークブルーのシルクシーツを敷き、枕も同色のシルクカバーで包むと、寝室は見違えるほど艶っぽい雰囲気になった。 二人が浴室から出てきた。沙也加が洗面台の前で髪を乾かしている間に、先に実貴雄がシャツとパンツ姿でダイニングに入ってきた。 「ビールあるかい」利郎を見つけて言う。 「はい」 利郎は冷蔵庫から缶ビールを取り出して実貴雄に「どうぞ」と渡した。実貴雄は窓際に立って夜景を眺めながら、ビールをクイグイ飲み始めた。四肢の筋骨が逞しく、すね毛が濃い。その男っぽい風情に利郎は威圧される。 少しして沙也加がダイニングに入ってきた。湯上がりの桜色の肌に、丈の短いライトブルーのナイトローブをまとっている。V字に深く開いた胸元に、ふくよかな乳房の谷間が覗き見える。利郎が初めて見るナイトローブだ。実貴雄のために妻が買ったのだと思うと、利郎の苦渋は深まる。 「うぉー、可愛いねサヤ」と実貴雄がほめる。 沙也加はにっこり笑い、腰を揺すりながら実貴雄に近づいた。彼から缶ビールを受け取り、残ったビールを飲み干すと、空缶を利郎のほうに突きつけた。 利郎が近づいて缶を受け取ると、実貴雄は待ちかねたように沙也加の腰に両手を回した。彼女は両手を実貴雄の首に回す。夫の目の前で、妻と愛人は接吻を始めた。ことさら見せつけようとしているのではなく、単に利郎を空気のように感じているようだ。自分が邪魔者であるように感じ、利郎はすぐに二人から離れた。しかし、熱い口付けを見ずにはいられない。ぴったり体をくっつけあい、音を立てて何度も唇を押し付けあう。大きな手が、沙也加の尻、背中、首を縦横に撫で回す。その手が優美なうなじを包むようにつかんだ。実貴雄が舌を唇の間に差し入れて力強く出し入れすると、沙也加はのどを鳴らし、とろけるように彼にもたれた。 二人はディープキスを解いた。 「続きはベッドで……」沙也加がささやくように言う。 「よーし、たっぷり可愛がってやるよ」 実貴雄は軽々と沙也加を抱き上げた。彼女は「きゃっ」と声を上げ、「うわー楽チン」とはしゃぐ。実貴雄が寝室に向かい始めると、かかえられた沙也加が振り向いて肩越しに利郎に言う。 「トシもお風呂入ったらいいよ。後でアタシたちもシャワー使うから、きれいにしといてね」 利郎は絞り出すように「はい」と返事し、寝室に消える妻と愛人をじくじたる思いで見送った。頭に血が上り、下半身が熱くなっていた。
[2007/07/28 09:58]
小説 |
トラックバック(-) |
CM(2)
「劣位の三角関係」とは、筆者が自らの性嗜好を表現するために使っている用語である。性愛関係にある男女に対して劣位に置かれることに性的興奮を覚えるマゾヒズムの一形態である。 沼正三は『ある夢想家の手帖から』の中で、このような関係を三者関係(トリオリズム)と呼んだ。同書の愛読者であればこの用語で通じるであろうが、一般には「三者関係」ではマゾヒスティックな含意は伝わらない。 劣位の三角関係に類する用語として「寝取られマゾ」がある。この用語は、筆者の性癖にある程度当てはまるが、どんぴしゃりというわけでもない。 寝取られとは本来、恋人や配偶者を競争相手に取られてしまう状況である。しかし、筆者の性癖はその状況に限定されない。配偶者や恋人にはなりえない仰ぎ見る崇拝対象であっても、劣位の三角関係は成立する。例えば、支配者階級の夫婦に買い取られた奴隷のような状況である。したがって、劣位の三角関係は寝取られマゾを包含するより広い概念ということになる。 寝取られマゾと称される性癖には、妻や恋人が寝取り男に対して服従的になるのを見て興奮するケースが多く見られる。これは筆者も理解できる嗜好であるが、筆者にとってむしろ一番のツボは、優位女の劣位男に対する嗜虐心にある。つまりfemdom(女性支配)がベースにある。 女を取る、取られるといった表現は、女は男の従属物というニュアンスがあり、femdomにそぐわない面がある。女が主導的に男を差別待遇する状況を好むという観点から、筆者には「寝取られマゾ」より「劣位の三角関係」の方がしっくりくる。 マゾヒストを自認する人のなかで、劣位の三角関係の嗜好を持つ人は少数派であろう。しかし、希有なマイノリティかというと、そうでもなさそうだ。例えば、ザッヘル=マゾッホの『毛皮を着たビーナス』、谷崎潤一郎の『痴人の愛』、沼正三の『家畜人ヤプー』など、マゾ文豪の代表作にこの種の嗜好が色濃く見られる。精神的な苦悩や葛藤に感応するタイプのマゾヒストにとっては、往々にして蜜の味になるようだ。 M男にとって、この嗜好の利点の1つは、相手がノン気の女でもマゾ的状況を実体験しやすいことであろう。特にS女でなくても、男の恋心を弄んだり、嫉妬させて楽しんだり、男を乗り換える際に冷酷になったりするのはよくあることである。 当ブログでは、筆者の性嗜好を表すために「劣位の三角関係」を頻用する意向である。これは内省のための用語であり、一般的な用語として提唱する意図はない。
[2007/07/05 20:42]
随想 |
トラックバック(-) |
CM(4)
沙也加から精神的な責めと肉体的な愛撫を繰返し受けるうちに、利郎は実貴雄の話を持ちだされて苦しめられることで条件反射のように勃起するようになってしまった。悲しい性で、苦しめられるほど妻への思慕が増してしまう。しかし、妻の愛人の存在は本来望むことではなく、理性は抵抗していた。実貴雄の子種で妻が妊娠したらどうするのか? 夫婦関係は破局を迎えるに違いない。そのような心配を彼女に訴えたりもしたが、まともに取りあってもらえない。 「気をつけてるから大丈夫」 「でも、もしもってこともあるから……」 「そのときはそのとき。どうするかはアタシが決めるわ。リードしてもらわないとエッチできないくせに、人のエッチに口出ししないのっ!」 利郎は沈黙するしかなかった。 金曜日の晩、残業を終えた利郎は帰宅の道すがら煩悶した。かつては妻と二人きりの時間をどう過すか思い描く楽しい家路だったが、今や事態は一変している。 ――おそらく週末、妻はデートだろう。ひょっとするとまた実貴雄を家に連れてくるかもしれない。自分のマゾ性癖は知られているに違いない。どんな顔をして彼に向きあえばいいのだろう――もはや「出ていけ」などと言う勇気がないのは明らかだ。しかしこのままでは生活の中に彼がどんどん入り込んできそうだ。どうすれば歯止めをかけられるだろう? どうにもならない現実に利郎は他力本願になってしまう。沙也加と実貴雄が喧嘩別れして夫婦関係が平穏に戻らないだろうか、そんな当てのない空想の世界に逃避して不安を紛らした。 家の扉を開けると、玄関に見慣れない大きなスニーカーがあるのを見て利郎は凍りついた。聞き耳を立てると話し声がし、足音が近づいてきた。沙也加が玄関に顔を出した。 「あ、トシお帰り〜。いいタイミングね、ミッキーが来てるの。そんなとこに突っ立てないで早く上がんなさい。今後のこと話しあういい機会だから」 「えーっ……急に言われても困るよぉ……」困惑で表情がゆがむ。 「大丈夫よ。アタシに任せて」そう言って沙也加は奥に引き返した。 利郎はのろのろと靴を脱ぎ、家の中に入った。ダイニングキッチンには夕食をとった跡があった。居間では沙也加と実貴雄が寄り添ってソファに座り、テレビを見ながら談笑していた。利郎が入ってきても二人は気に留める様子もなく会話を続けている。とりあえず利郎もソファに座った。 実貴雄は利郎を一瞥しただけで会釈もせずに沙也加と話し続けている。前回より横柄な彼の態度に利郎はいやな予感がした。 ――意気地無しの寝取られ亭主と見くびられているのだろうか? 番組がコマーシャルに変わると、沙也加はリモコンでチャンネルを次々と切り替えた末、スイッチを切って話題を変えた。 「さっきね、アタシとミッキーの仲をトシが公認してくれたこと話してたの――ホントよかったよね」と実貴雄を見る。 「そうだね。こそこそと関係を続けるのはオレもいやだから」 利郎は公認したつもりはないが、泣く泣く容認しているのは確かだ。二人の視線を正面から受け、消え入りたい気持ちで伏し目になる。 「だからぁ、ミッキーとアタシはぁ、まったく気兼ねなく付き合えるわけ――そうだよね、トシ?」 「あ……うん」利郎は雰囲気に飲まれ、あっさり肯定してしまった。 「ほーらね、ちゃんと認めてるでしょ」と沙也加が実貴雄に笑いかける。 「おーラッキー」と実貴雄も笑う。 追い討ちをかけるように沙也加が言う。 「あとね、うちの人ちょっと変なの。ミッキーに服従したいって言ってるのよ」 実貴雄は高笑いした。利郎はあわてて否定しようとしたが、制するように沙也加は続けた。 「恥ずかしがらなくていいのよ、いい心がけだと思うから。ミッキーはね、高校のとき水泳部で部長も務めたから、体育会系の厳しい上下関係には慣れているの。トシはそういう人間関係に揉まれたことがないから芯が弱いんじゃないの。目上の人の立て方をミッキー先輩にみっちり教えてもらうといいよ。ミッキーも協力してくれるでしょ?」 「ハハハ、なんか面白そうだね。協力するよ」 利郎は呆然として言葉を返せない。 実貴雄は沙也加の頭の後ろの背もたれに腕を置き、いつでも彼女の肩を抱ける構えだ。沙也加は、家の中にしては珍しく短いデニムスカートを穿き、半そでのニットセーターを着て、露出した両膝頭を実貴雄のほうに寄せている。 「そんなわけでぇ、アタシ達の新しい関係に合わせて決まりごとが必要だと思うの――まずはトシの言葉づかいから変えていかないとね。これからアタシのことを『サヤカさん』って呼んでね。『サヤ』って呼べるのはミッキーだけ。トシはマゾだから本当は『女王様』って呼びたいかのもしれないけど、フフフ、人前でそんな呼び方をされたらアタシのほうが恥ずかしいよ。これは一時的なSMプレイなんかじゃなくて、ひょっとすると一生続くかもしれないライフスタイルなんだから。誰の前でも常に『サヤカさん』って言うように習慣づけてね」 利郎は人前で「サヤカさん」の呼び名を使うこともあるので、別に難しい注文ではない。しかし、使い慣れた「サヤ」の呼び名を実貴雄に取られてしまうのは悔しい。 「どうなの、トシ。わかった?」 「うん」としょぼくれて返事する。 「『うん』じゃなくて『はい、サヤカさん』って答えなさい。ミッキーがいる前ではアタシに馴れ馴れしくしちゃ駄目。敬語を使いなさい」 「はい、サヤカさん」気圧されて利郎は従う。 「じゃあ、ミッキーはどう呼んでもらう?」と実貴雄に問う。 「ミッキーさんでいいよ」 「上下関係がはっきりするように『ミッキー先輩』ってのもいいんじゃない?」 「ウフフ、それでも構わないよ」 「うちの人のことはトシでもトシロウでも好きなように呼んで。適当にニックネームをつけてくれてもいいし」 「うーん、考えておこう」 利郎は自分の立場がどんどん落とされていくさまに震撼した。自分より十歳年下の学生、しかも妻を寝取った相手を「先輩」と呼ばされ、自分は呼び捨てにされるというのは、あまりにも屈辱的だ。しかし、妻がそれを望むのであれば耐え忍ぶしかないのだろう。 実貴雄は沙也加の髪をすくように触り始めた。彼女はやや上気した表情で、実貴雄の膝をゆっくり撫でながら話しを続けた。 「トシはアタシに尽してくれるいい夫よ。でも、夫の務めとして足りない面もあるんだよね。それをミッキーが補ってくれるわけ。ミッキーはね、トシを家から追い出そうとしてるわけじゃないんだよ。だからその寛大さに感謝して、トシはミッキーに敬意を払って欲しいの。ミッキーはアタシを幸せにしてくれる大切な人なんだから、トシにとっても大事な人のはず――わかる?」 利郎は口の中がカラカラに乾いて即答できなかった。 実貴雄の指が沙也加の髪に分け入ってうなじをなぞると、彼女は肩をすぼめてクスッと笑った。利郎の緊張とは対照的に、二人ともリラックスしてこの状況を楽しんでいる。 「アタシたち三人が円満にやっていけるかどうか、トシの努力次第よ。どうなの、アタシを幸せにするために、ミッキーにも尽してくれる?」 「……はい」 沙也加に同意することが何を意味するのか、利郎は理性的に考えられる状態ではなかった。自分の立場が崩れていくのを感じ、ひたすら彼女に従うことに救いを求めた。 「だったら、ミッキー先輩にお辞儀して、ご指導よろしくお願いしますって言ってごらん」 利郎は屈辱に耐えながら頭を下げた。 「ミッキー先輩……ご指導よろしくお願いします」しわがれ声になった。 「ん、何を指導したらいいのかな?」実貴雄はとぼけた返事をする。「まあ、オレとサヤが仲良くするのに協力してくれたらそれでいいよ」 「どういうふうに協力すればいいかビシバシ指導してあげて。トシはまだ何もわかってないはずだから」 「ああ、わかった――でもサヤすごいね。こんなにすんなり話がつくなんて思わなかったよ。やるじゃん」 「ほめてくれて嬉しいわ」 沙也加が唇をすぼめて実貴雄に向けると、彼は即座に反応して唇を合わせた。湿った空気音とともに二人の唇は離れた。自然なキスにあうんの呼吸ができている。二の腕を抱き寄せられた沙也加は、実貴雄の肩にもたれた。 妻がもはや手の届かない存在になったと感じ、利郎は切なく胸を痛めた。 実貴雄の腕のなかで満足げな目をして沙也加が利郎に言う。 「じゃあもういいから、食事の後片づけしておいて。余ってるもの適当に食べていいわよ」 「はい」利郎は救われる思いで立ち上がった。親密に振る舞う二人の前で自分の惨めさをさらし続けるのはつらかった。「失礼します」とぎこちなく挨拶して居間を出た。尻尾を巻いて退散する負け犬である。 利郎の背後でクスクス笑い声がし、少し間を置いてキスの音が響いた。
[2007/07/02 20:56]
小説 |
トラックバック(-) |
CM(2)
| HOME |
次ページ≫
|